安らぎのあった大通り

頭のどこかで、客馬車がパカポコ、パカポコ。荷馬車の溜り場だった馬庭や、めし屋の光景がまた浮かんできた。そうだ、ここは商店をやっていた兼ちゃんちの前だ。子どもたちがグルグル走り回っている。野菜売りのおばさんたちも、ペチャクチャと話に夢中。めし屋から、女将さんとお客の会話が聞こえてきた。「徴兵検査どうだったー?」「落っこちたよー」「それは、よかったねー」。女将さんの旦那は、戦地に行ったまま帰って来ない。そういう時代ではあったが、子どもだった僕には、あの大通りは楽しくて安らげる遊び場だった。入道雲も思いっきり広がって遊んでいた。